『バカの壁(新潮新書)』、遅ればせながら読みました。
もう20年も前に発刊された本だったのですね。
言わずと知れた養老孟司さんのベストセラーです。
新潮社の編集部の方が養老さんのお話を聞いて、それを文章化したものです。
お話しとしては、おもしろいです。
最初のエピソードは特に印象に残りました。
大学の薬学部の学生に、
ある夫婦の妊娠から出産までを詳細に追ったドキュメンタリー番組を見せたときの、
学生たちの反応です。
その反応が、男子学生と女子学生ではっきりと違ったというものです。
この違いは興味深いですね。
男子は「全部知っている」と言うし、
女子は「新しい発見をした」と言うのです。
これはどういうことなのか?
もうひとつ、興味を引かれたのは個性の話です。
「教育現場において、おまえの個性を伸ばせなんて馬鹿なことは言わないほうがいい。」
「それよりも親の気持ちが分かるか、友達の気持ちが分かるか、ホームレスの気持ちが分かるかというふうに話を持っていくほうが、よほどまともな教育じゃないか。」
これなんか、示唆に富んでいると思います。
口述筆記ということもあってか、理詰めで納得とはならないところもありますが、
考えるきっかけは、随所にあるように感じます。
「放っておいたって個性的なんだということが大事なのです。」という記述に、
「縛っても縛っても、なお、ほとばしるものが個性だっ!」
こんなことを言っていた、かつての職場の同僚のことを思い出しました。