「タキ姐のいろんなこと、いっぱい聞きたい。僕がインタビュアーになる。いろいろと聞いて活字に残しておきたい。本にして多くの人に読んでいただき、知ってもらいたい、タキ姐のさまざまなことを」
こんなふうに、さだまさしさんから加藤タキさんにオファーがあったようです。
こうして、2日間6時間余りに及ぶインタビューが実現し本になったのがコレ、
『さだまさしが聞きたかった、「人生の達人」タキ姐のすべて』です。
さだまさしファンのワタシとしては興味津々です。
さださんがそうまで言う加藤タキさんってどんな人だったんだろう?って。
ただね、対談本って要注意なんですよね。
話が深まらないでどんどん横滑りして行っちゃったり、
2人の会話がかみ合わないで、お互いにしゃべりたいことだけしゃべって終わりだったり。
この本を読み出したときも、ちょっと感じたんです。
「あれっ、買って読むほどのものじゃなかったかな」って。
でも、2章めあたりから俄然おもしろくなりました。
さすが、さだまさしさん。
ご自身の言いたいこともちゃんとしゃべって、
それでいて、加藤タキさんの魅力を十分に引き出してくださってる。
アーティストコーディネーターとして活躍してきた加藤タキさんの、
名だたる名優・音楽家との仕事を超えた?交流は興味深く引き込まれます。
オードリー・ヘップバーンさんのエピソードは特に印象的です。
アンネ・フランク役のオファーが何回もあったのに断り続けたこと、
それが、晩年アンネ・フランクの日記を朗読したというエピソード。
アンネ・フランクとは生まれが一か月くらいしか違わないという。
アンネは強制収容所で亡くなった。
オードリーさんはオランダでレジスタンス運動の手伝いをしていたそう。
「自分のことのようで、とてもじゃないけど私は語れないし、演じることはできない」
彼女がずーっと断り続けていたのは、こういうことだったのですね。
そんなヘップバーンさんがユニセフの大使になって初めて募金活動をしたとき、
「ものすごいお金が集まったんですって。で、『このために私は女優をやってきたんだ』と感じたというの。」
これなんか、すっごくいい話です。
それに、忘れてはいけないのがタキさんのお母さま加藤シズエさんの教えです。
「みんな怪我すれば、同じ赤い血を流すの。痛かったり悲しかったりすると、同じしょっぱい涙流すの。だから、みんな、どんな人も同じなの。違って当たり前なの。あなたはあなた、ママはママ。違うけれど同じ人間なの。」
3歳の時にタキさんがお母さまから言われたことだそうです。
また、タキさんが42歳で子どもを出産したときはこんなことも。
「あなたの子どもが挫折することを恐れてはいけない」
「この子は今は飲むだけ、泣くだけ、出すだけ、寝るだけ。でも、一個の人格ですよ。あなたの所有物ではないのよ。」
さらに、
「あなたはこの子に将来こういう学校に行って、こういう職業に就いて、こういう人と結婚してって、これっぽっちも理想像を描きなさんな。ちょっとでもそう思った途端に、あなたが描くレールに息子を乗っけることになるから、それは彼の人格を無視することになる。そうではなくて、彼がどんなときにすごく喜ぶとか、どんなときに悔しそうに泣いてるとか、それを見抜いて、好きなところを伸ばしてあげなさい」
こうなると、もう教育書の一部みたいです。
楽しくて、引き込まれて、ためになるお話が満載です。