「昔話の世界とは私たちの住む現実と並ぶようにして存在しているのですが、時どき、ふたつの世界を隔てる壁がひどく薄く、脆くなることがあり、そうなると両方の世界が混ざり合いはじめてしまう場合があるのです。」(25ページ)
「本を好む人はいいなァ」と思います。
子どものころは実体験がまだまだ少ないですから、容易に物語の世界に入っていけます。
子どものころは、たくさん本を読んだらいいと思います。
ときどき、現実と物語の世界が区別できなくなることもあるかもしれません、が。
この疑似体験が、大人になった時の豊かさにつながるような気がします。
子どもの頃に、自分の中に物語の世界を持つことが大事なような気がするのです。
それが大きければ大きいほど、大人になった時の世界が豊かになるような。
大人になると、どんどん現実的になります。
想像力もどんどん衰えていきます。
子どものころに自分の中に取り込んだ物語がものをいうのはそんなときです。
子どものころに取り入れた物語の世界は自分の豊かさの種だったのかも。
だからかもしれないです、大人になっても物語を求めるのは。
この本『失われたものたちの本』は、大人にこそ読んでほしいです。
宮崎駿監督のジブリ映画『君たちはどう生きるか』のベースになってるとか。
確かに、自分に才能があれば映像にしたくなるでしょうね。
インスパイアされる、と言ったらいいのでしょうか、そんな感じ。
この世界を文字で表した作者のジョン・コナリーはすごいですね。
これを映像にしたら、映画『君たちはどう生きるか』の世界になりそうです。
両方楽しむと、相乗効果がありそうです。
読後の感想は、「とにかく楽しかった」です。
ジェットコースターのように楽しめました。
どんな感じに楽しめたか?って聞かれると困ってしまいます。
上へ下へ、右に行ったり左に曲がったり・・・
こんな説明をしてもぜんぜん伝わりませんよね。
とにかく、物語の世界にどっぷり浸かれる幸せをどうぞ味わってみてください。
ときどき、ぐっと迫ってくるこんな言葉たちにも出会えました。
「物語は読んでほしがっている」(16ページ)
「ルールや決まりごとはいいが、自分を満たしてくれるものに限るよ」「庭に咲く花や、窓辺の花瓶に活けた花の世話をするのもいい。自分よりも弱いものを見つけ、自分の手で安らぎを与えようとすることだよ。そういう行いを決まり事や、人生のルールにするんだ」(130ページ)
「自分がしたいから、勝手にそうしたのではないか。お前は誰かに邪悪な行いをさせられたのではないぞ。そんなことは誰にもできやせん。己のうちに飼う邪悪に、お前がおぼれただけのことさ。人間とは常に、自らの持つ邪悪に溺れるものだからな」(412ページ)
「何もかも本の中に書かれているのだよ」(429ページ)