人は人間に生まれない、人間になるのだ。
こんな言い方はないかもしれないけど、人間になるのは結構難しいことだと感じます。
動物が生まれて栄養を取り入れてやがて成体になるように、人間も大人になれるか?と言ったら、そんなに簡単ではないような気がします。
『あなたを愛しているつもりで、私は――。娘は発達障害でした』を読んで改めてこんなことを考えてしまいました。
主人公の夕子は発達障害が疑われる七緒の母親です。
夫はいるが、夕子とは子育てのスタンスがちょっと違う。夕子は「自分がしっかりしなければ」と七緒のことを一人で抱え込んでしまう。
そしてどんどん追い詰められて、終盤には自分自身の育てられ方がフラッシュバックする。
子育ては「自分育て」だとも思います。あるいは「生き直し」かな。
子どもを育てているうちに自分の育てられ方や自分自身の親との関係が影を落とします。
子どもが健康で精神的にもすくすく育つなら問題ないのですが、そんなことは至極希で概して子育てはトラブル続きです。
ましてや、子どもが発達障害を抱えていたりしたら尚更です。
小説で読んでいてもきついのだから、実際に自分の身に起こったらと思うと・・・
やっぱりここでも見えるのは、親が良かれと思って子どもをいじくりまわしてしまうこと。
「よく導きたいと思うあまりに、何より大切な目の前の我が子の気持ちが見えなくなっている。愛しているつもりで、よかれと思って、相手の幸せを願って・・・自分の思いに囚われて目を塞ぎ、親は子とすれ違う。」(本文より抜粋)
結末がどうなるかはネタバレなので書けませんが、希望はあります。