誰でも聞いたことがある有名なフレーズです。
どうやら吉田松陰の「親思う心にまさる親心けふの音づれ何ときくらん」という歌に由来するらしいですね。
「子どもが親を思うより、親が子を思う気持ちの方が勝っている」ということですが、ホントにそうなのでしょうか?
最近これを疑う映画や本をたて続けに目にしました。
そのひとつが「兄の名は、ジェシカ」という本です。
「読書感想文全国コンクールの課題図書(高等学校の部)」と、本の帯に書いてありました。
ちょっとネタバレになりますが、表紙を見ればある程度察しがつくのでご容赦を。
表紙にはポニーテールの絵にタイトル「兄の名は、ジェシカ」とあります。原題は my brother’s name is JESSICA です。
イギリスの話で、ジェシカは女性に多い名ですから、タイトルを見ただけでテーマがわかります。
ご丁寧にも、本の帯には『「LGBT」って、何か知ってますか?』なんて書かれています。
最近よく見かける題材ですが、話題だからというだけでなく小説として引き込まれました。
そして、私が感じたことは、親が子を思う気持ちは子が親を思う気持ちより強いか?っていったら疑問だ!ということです。
どちらかと言えば反対じゃないですか?と感じています。
しかし、こういう論調はあまり歓迎されないような気もします。
世間では親側の声が圧倒的に大きいですからね。
必死の抵抗むなしく、子どもは親の圧力に屈してしまうというのが現状だと思いますよ。
「この子を助けてやりたい、理解してやりたいと思っている」と言いながら、子どもの話を聞かない親。
親は子を思うゆえに親から見て想定外のことは認められない、認めない。
最後の方に出てくる「もっと話を聞いてやればよかったんだわ」というお母さんの言葉に救われた思いがしました。
LGBTに限らず、親子について考えさせられる小説でした。
「作者のあとがき」にこんな言葉がありました。「わたしがものを書く理由のひとつは、ほかの人々の人生を探ってみたいから」
人生に深入りすることは作家に限らず読者にとっても必要なことだと改めて思いました。