この本の中に出てくるウクライナの街の名前です。
耳に馴染んだ名前もあります。
ロシアによるウクライナ侵攻という状況の中で馴染んでしまった、というのが悲しい。
この本というのは、
「今朝早くね、爆音が聞こえたのよ。朝の4時頃」
それは、お母さんの一言から始まりました。
「いよいよ戦争が始まったんだと思うわ。」
そう、戦争の始まりだったのです。
これは歴史上の過去の出来事ではない。
現在進行形で起きている事実です。
戦争という現実を目の前にすると私たちの営みは如何にちっぽけなものか、
思い知らされる。
・・・が一方で、そこには懸命に生きている自分と同じ生身の人間がいる。
この本を読んで、そんなことを思い知らされた。
書いたのは、ズラータという名の16歳の少女です。
日本語が好きで、日本のマンガが好きで、日本に行って漫画家を目指したい、
そんな普通の高校生が、ある日突然に戦争に巻き込まれた。
これが現実。
「戦火の最中にあっても、一人ひとりが夢や希望を持って暮らしている」
このことが、ズラータの日記から確実に伝わってきます。
「あなたは日本に行くのよ!」
戦争が始まってまもなく、ズラータは二人暮らしの母親に告げられます。
お母さんがつくってくれたなけなしのお金、渡航費16万円を持たされて。
いくら憧れてる国だからって、一人で外国(日本)に行くことを決意した本人もすごいが、
16歳の一人娘を何の伝もない日本に行かせようとする母親も腹が座ってるというか何というか。
それからの出来事は、こんなことが起こるものなんだ!というびっくりの連続です。
戦禍のウクライナを脱出することだって簡単ではないのに、
次々に起こる偶然は、こんなことが起こるんだねと思うほどびっくりです。
空港について検査を受けたらコロナ陽性で足止めされる悪夢のような出来事から、
ポーランド国境の街で偶然出会った、ウクライナから避難する人たちの様子を取材していた日本のテレビ局の取材陣、
空港に足止めされた際のホテルの宿泊代を立て替えると申し出る現地の取材スタッフ、
日本での身元引受人になってくれた、ネットでしかやり取りのなかった日本人の鳥羽さん、
ウクライナから日本に行こうとしている人を支援しているというポーランド在住の日本人の綾香さんに至っては、
「あなたのサポートもさせてくれないかしら。つまり、日本へ行く飛行機代は私が出します」
という申し出まで受けることになる。
「戦争は私たちの街を壊し、家を壊し、日々の安全な暮らしを脅かして、罪のない人の命までたくさん奪っている。みんなが故郷を追われ、明日からどうやって生きていったらいいのだろうと頭を抱えている。」
「でも、そんななかでも、こうして人がお互いの心を寄せ合い、助け合い、思い合うことを忘れずにいる。戦争に、心の美しさまでは奪うことができないことを、私たちは訴えたかった。」
人の生活を破壊して命さえ奪ってしまう戦争を起こすのも人間、
そして、人を助けたいと自分の財産までも差し出すのも同じ人間。
ズラータさんが日記にこんなことを書いていたー
「戦争はいつも理不尽だとは思う。特に今回の戦争は意味がわからない。それでも今回、いろいろな人たちに助けられて改めて痛感した。人を憎むより、感謝や恩に報いたいと思う気持ちのほうが何倍も人に伝えたくなる。後世に伝えたいと思う。もしかしたら、こうした気持ちが多くの人に伝われば違う未来が生まれるのではないかな。」
ここに希望を見た。