「いかにも私小説として読まれそうな作品ですよね。」
作者ご本人が文春オンラインでこのように語っています。
はい、その通りに読ませていただきました。
芥川賞を受賞したばかりの作家・早見有日(はやみゆうひ)が主人公です。
早見の本名は長井朝陽(ながいあさひ)で、ゲームセンターで働いているという設定。
この本は小説だから、作者の身に本当に起こったことではないでしょう、
・・・が、
やっぱり、想像しちゃいますね。
読みながら、本の中での早見有日と長井朝陽の境界が曖昧になっていく。
そして、主人公の長井朝陽とこの本の作者である高瀬隼子さんとの境界も・・・。
どういう読み方をすればいいんだろう、と迷いながら読んでいました。
なんだか、新感覚です。
職場には内緒にしてペンネームで小説を書いていたら、大きな賞を受賞したりして。
顔出ししないで生きていくのは大変だろうな。
ペンネームの作家とリアルな自分の2つの人生を生きるってどんな感じなのだろう。
そんな立場になってみたいな、と思わなくもないが、
街を歩いても誰も気づかない凡人であることの幸せ、
これって、けっこう大事なのかも。