「モンスターを倒した。これで一安心だ」
母を刺殺した娘はツイッターにこう投稿した。
このとき娘は31歳、医学部合格を目指して9年間の浪人生活を経験していた。
『母という呪縛 娘という牢獄』というノンフィクションを読みました。
読み物としては、すごく引き込まれて一気に読んでしまいました。
これが小説ではないということが、気持ちを重くします。
「どうしてちゃんとできないの?」
「何でこんなことが分からないの?」
「勉強してたのに結果が出ないってどういうことなの?それって本当に努力したって言えるの?」
子を持つ親なら、誰だって一度や二度は口にしそうな言葉ですよね。
しかし、これが度重なってエスカレートしていくと・・・
この母娘はどうしてこんなことになってしまったのだろう?
こういう結末になるしかなかったのか?
どうすればよかったのだろう?
裁判で娘は、死体損壊・遺棄については認めたが殺害は否定した。
一審では懲役15年の判決が言い渡された。
しかし、弁護士から勧められた控訴審では一転殺害を認めることになる。
この間に何があったのか、
それが、一審で言い渡された判決文でした。
判決後、娘はこの判決文を何度も何度も読み返したようです。
そして、「誰にも理解されないと思っていた自分のしんどさが、裁判員や裁判官に分かってもらえた ----- 嘘をついているのに。」
「もう嘘をつくのはやめよう」
判決を読み上げる裁判長の言葉に触れて、娘は「他人であっても、私が嘘をついても、私が母との苦しみであったり、そういったことが理解されるんだなっていうことが分かりました」
弁護士の前で殺害を認めた娘は涙を流していた。
一審の裁判では泣かなかったのに。
人間性を失ってしまっていた娘がそれを取り戻した瞬間だったのでしょう。
悲劇の末にやっとたどり着いた。
二審での判決は懲役10年、検察も弁護側も上告することなく判決が確定します。
それにしても、こうなるしかなかったのか?
子を持つ親には読んでほしい一冊です。(シンドイけど)
著者の齋藤彩さんは司法記者出身のライターで、この本がはじめての著作だそうです。