「涙を食べて生きた日々 摂食障害――体重28.4kgからの生還」を読みました。
本書は、拒食症と過食症という摂食障害を経験した当人によるエッセイです。
ノンフィクションとして、読み物としても十分に惹き付けられる作品です。
どうして、この本を手にとったのか? 自分でもわかりません。
当事者でもないし、身近に摂食障害に苦しむ人がいるわけではありません。
そんなワタシでも、この本を読んでよかったと思います。
本書の「はじめに」で、著者が本書を書いた理由をこんなふうに説明しています。
「私がこの本を書いたのは、摂食障害の患者とそうでない人との〈ズレ〉を示すためです。」
「なぜこのようになったのか、その〈ズレ〉を理解してもらうには、私と同じ立場に立ってもらうしかありません。そのために、当時の自分の感覚や価値観を掘り下げ、深く描写し、私の経験を追体験してもらえるように注力しました。」
この言葉の通り、迫力ある表現で、その世界に引き込まれて追体験をさせてもらえました。
読んでよかった、巡り会えてよかったと思います。
以前職場に、長期休暇を取っている人がいたことを思い出しました。
休暇明けのその人の姿を見たときに、見違えるほど体型が変わっていたのを思い出しました。
言葉を交わすほどの関係ではなかったので、実際のところは何もわかりません。
もしかしたら、摂食障害だったのかも知れません。
ワタシ自身は摂食障害を経験したことはありません。
しかし、この著者の悩みはワタシのそれと地続きです。
本書の最終章にこんな記述があります。
「価値は他人に承認を求めるものじゃない。存在自体が価値なのだ。そして存在は認識することで成り立つ。私がしっかりと大切な記憶を心に留めておけば、たとえ他人に認められなくても、誰かに笑われたとしても、その価値は汚されない。」(P.270)
ワタシも同じです。
書いてくれてありがとう。