モヤモヤを抱えて今日も生きる。

とかくこの世は生きにくい。日々モヤモヤを抱えて生きています。モヤモヤジャンルは本・子育て・教育・映画・ニュース・社会などです。あなたに響けば幸いです。

「こんなことってある? アメリカの大統領が心の内をボクに語りかけてくれるんだよ」

もちろん実際にアメリカ大統領が直にワタシに語りかける訳がありません。でも、この本を読んでいる間は、傍で話を聞かせてくれているような気がするのです。

 

本の魅力ってそんなところにあると思うんです。これが若者に知ってもらいたいこと。

 

話題にしたのは、オバマ元大統領が記した『約束の地 大統領回顧録1 上 (集英社学芸単行本)』『約束の地 大統領回顧録 I 下』です。

 

この本には、オバマ氏の生い立ちから大統領選を経てオサマ・ビンラディン暗殺までが書かれています。

 

「大統領も一つの職業にすぎない」と言うように、この本にはオバマ氏が一人の人間として親として夫としてどう生きてきたのかという人間ドラマが描かれています。

 

妻のミッシェルさんと出会った時の様子や大統領出馬に反対されて悩むところなどは、はるか遠くの存在には思えないくらい親近感を覚えます。

 

大学生の時には女の子に振り向いてもらいたくって本を読んで偽の知性をまとったなんていうところは、「なんだ、おまえもか?」って突っ込みを入れたいくらい。

 

「大統領の座にあることがどんな感覚なのかをできるだけ読者に伝えたかった」とありますが、その通りに十分伝わってきます。

 

最初から最後まで惹き付けられっぱなしだったのですが、特に印象に残ったところが「家族を犠牲にしてまでなぜ大統領になるのか」と「オサマ・ビンラディン暗殺後の思い」を語る場面です。

 

ちょっと長いですが以下に引用して終わります。

 

「自分の気持ちなど永遠に解き明かせないかもしれない。私はマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の「楽隊長の本能」という説教を思い出した。その中で彼は、誰しも心の奥底には自分が一番になりたい。偉大さを祝福されたい、つまり「楽隊を先導したい」という欲求があると語っている。さらに、そうした利己的な衝動は、偉大さを求める気持ちを無私の目的と結びつけることによって静まるとも言っている。他人への奉仕、他人への愛で一番を目指せばいいというわけだ。私には、さもしい願望と崇高な行為とを同時に追求するという難題に取り組むことが、自分の欲求を満たすことができる方法であるように思えた。ただし今はそれが自分ひとりの犠牲だけではすまないという明白は事実にも直面していた。この長い旅路には家族が巻き込まれ、困難にさらされる。キング牧師の掲げた主張や彼の天賦の才は、そういった犠牲さえも正当化したかもしれないが、私の掲げる大義は果たして犠牲に見合うのだろうか。」

 

「戦争の真のコストと、それを背負ったのが誰かということをはっきり理解したからだ。そのとき私は、戦争の愚かさと哀れな物語を、私たち人類が世代から世代へと語り継いでいることも理解した。人間というものは無意識に憎しみを煽り、残虐さを正当化し、よき者でさえも殺戮に加担させるということも。戦争の中に大きな善と思われることを見出すことで自分の決断をなんとか正当化したとしても、私の立場では、失われた命や希望をくじかれた人生に対する責任を回避することなど許されないのははっきりわかっていた。」