ある駅で電車を降りました。
ホームは、改札へと続く階段に向かうかなり多くの人で込み合っていました。
人込みを避けたいと思って、少しゆっくり目に歩いていると、
人込みの最後の方、丁度ワタシの目の前に白杖を持った女性が見えました。
その女性は上り階段の手前で、ちょっと迷いがちに左の方に・・・
階段は中央が鉄の手すりで仕切られていて、左が降りる側で右が上る側との表示。
白杖の女性が少しずつ左に寄って行くのがわかりました。
(どうしよう?「右ですよ」って声をかけようか?)
ワタシが迷っているうちに、その女性は自分で気づいたのか、右の方へ寄っていって、
上り階段の人々の流れに乗りました。
ワタシはしばらくその女性の斜め右後ろを歩く位置取りに。
見るともなく見ていると、その女性の階段を上がる際の白杖の扱いは見事でした。
難なく階段を上り、人の流れとともに改札に向かいます。
その時です、女性が小さく「あっ!」と声を上げました。
ちょうど目の前の柱に額をぶつけたのでした。
ワタシもその瞬間を見ていて、心の中で「あっ!」と。
(やはり、声をかけるけるべきだった)
その後改札の前でも、ちょっと迷いが見えましたが、上手に通過して行かれました。
改札を出てからは左に向かう通路を、黄色の点字ブロックを、
白杖で、見事にトントンと叩きながら人の流れに乗って歩いて行かれました。
ワタシは途中で右の階段に逸れて、駅舎の外に出ました。
何度も声をかけるチャンスがあったのに、結局声をかけられませんでした。
(様子を見ていると、この方は慣れているようだから)
こんなふうに勝手に考えて、声をかけるチャンスを逃してしまったのです。
自分の不甲斐なさに少し落ち込みました。
声を掛けるのって難しい。
“いい大人”が何してんだろう。
こういうことが、普通にできる人になりたい。