永井みみさんのデビュー作『ミシンと金魚 (集英社文芸単行本)』を読みました。
読み始めてすぐに、カケイさんの独特な語りに引き込まれてしまいました。
認知症を患う「あたし」がカケイさんです。
このカケイさんの語る内容が壮絶な女の一生なんですね。
でも、このカケイさんの語りがとぼけているのでそれほど重くならない。
むしろユーモラスですらある感じです。
生まれて老いて死ぬのは、誰でもたどる道です。
自分もこんなふうに老いていくのかなぁ。
老いるっていうのはこんな感覚なのかなと想像させます。
内容もおもしろいのですが、
この小説の作風です。
小説全部がカケイさんの世界で、
カケイさんの話を近くでずっと聞いているんじゃないかと錯覚さえ覚えます。
終わりの方にこんな一節があります。
「しみじみ、おもう。
わるいことがおこっても、なんかしらいいことがかならず、ある。
おなし分量、かならず、ある。」
自分にも、こんな老いと死がやってくるんだろうな?
そのときは、カケイさんと同じような心境になれるのかなぁ。
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