友だちの家に上がり込むことが別世界との遭遇だったが、
それよりも小さい頃の別世界を覗き見る体験は親戚の家だった。
パパがよく親戚の家に連れて行ってくれたものだった。
パパの兄弟が近くに住んでいたということもあるのだろう、
休日の娯楽といえば、親戚の家に行くことだったのかもしれない。
そこではオジサンやオバサンの他にいとこにも会うことができた。
それぞれの家が違った雰囲気を醸し出していて魅力的だった。
僕たちはそれぞれの家をその土地の地名で読んでいた。
その地名は、僕にとって単なる地名を超えた特別な響きをもっている。
お店を構えている家もあれば、卸の商売をしている家も、
普通のサラリーマンの家も…というぐあいにいろいろだった。
オジサンとオバサンがいたのだが、自分とどんな関係なのかは知らなかった、たぶん。
いとこもいたが、ただ単に「シンセキ」の人だと思っていただけ。
当時の僕は「シンセキ」が親戚だってことだって知らなかったと思う。
ましてや、それぞれの関係性なんて意識していなかったんじゃないか。
でも、子ども心に「この家は居心地がいい」とか「ココはなんかぃやな感じ」なんて、
雰囲気はちゃんと受け止めていたように思う。
(つづく)