小学生の頃、街からずっと離れた森にクワガタを取りに行くのは
僕らにとっては、ちょっとした冒険だった。
でも、僕にとってもっとワクワクすることは友達の家に上がることだった。
家というものは外から見てるだけではわからないが、
中に入ってみると全然違う世界が広がっている。
家の中のつくりは自分の家とは違うんだってことが僕にとっては驚きだった。
他人の家に入っていくことは、ちょっとした未知との遭遇でワクワクだった。
近所の友達には美容院や小さな旅館を営んでいる家の子どもがいた。
電化製品を置いているちょっと大きなお店を経営している家の子どももいた。
その子の家に遊びに行ったとき、こたつの上に無造作に置かれたお札の束にビックリした。
応接間というソファーとテーブルの部屋も友達の家で初めて実際に目にした。
紅茶を初めて口にしたのも友達の家だった。
レモンティーを飲まされた時の驚きは忘れられない。
いろんな世界があるんだなぁと、そのとき子ども心に思った。
(つづく)