「あぁぁぁ~あ、源ちゃんのはなしぶりだぁ~」
勝手に「源ちゃん」と呼ばせていただきます。この本の著者の高橋源一郎さんのことです。
ラジオでもお声を聞いているのでとても親しみを感じていて、周囲で話題に上るときは「源ちゃん」と呼ばせてもらっているものですから。
この本を読んでいる間中ずーっと、源ちゃんの声が聞こえていました。
作者ご本人に読み聞かせをしてもらっているような贅沢な心地よさを感じていました。
もっと言うと、本を開くたびに源ちゃんが語りかけてくれるようでした。
だから、文庫版の穂村弘さんの「解説」を読んだときはビックリしてしまいました。
「なんだかどきどきするのは、どうしてだろう。内容もさることながら、独特の口調に秘密がありそうだ。この不思議な語り声には、なんとも云えない魅力がある。書き手の高橋源一郎さんは、もともと特別な声の持ち主だ。どんなに難しい文学の本の中でも、少しも構えることなく、友だちのように語りかけてくる。そんな作者が、この本を「ぼくにとって最初の『児童文学』」(「あとがき」より)と位置づけて書こうとしたことで、その語り口はいっそう魔力を増しているようだ。」
そういうことですよね。
そして、読んだ後の気持ちはとても穏やかで暖かくなっていました。
自分はたった一人でこの世に生きているのではなくて、誰かとどこかでつながっている。
大きなものに包まれて生きている。
だから、安心して歩みを続けなさい。
こんなふうに背中をやさしく押されたように感じました。